道徳教育における「道徳性の様相」と「道徳的価値」の問題
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概要
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学校における道徳教育の目標は「道徳性」の育成にあるとされる。この「道徳性」は「道徳的心情」「道徳的判断力」「道徳的実践意欲と態度」などの「様相」から構成されている。そして、これらを育成するために「道徳的価値」を含む内容が道徳教育の「内容」項目として提示され、児童生徒においてはこの内容項目に含まれる「道徳的価値」を自覚し、身に付け、深めることが求められる。これらのことは昭和33年に道徳教育が学校の教育課程に位置づけされて以来、一貫して変わらない道徳教育の構造であり、文部科学省の基本的な考え方である。 このような道徳教育の構造やその考え方は多くの問題を孕む。その主要な問題は、「様相」及び「道徳的価値」が既成の道徳的な価値意識によって表現される実質的な内容との関連で取り上げられ、児童生徒が既成の道徳意識に制約されたままにとどまることにある。それは人間としての行為を問題にする人間の道徳性という本来の意味を危うくするものである。