微生物相の制御による病原微生物抑制(環境保全型農業のための微生物利用:複合微生物系における有用微生物の動態と制御,シンポジウム)
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概要
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Biofilmや歯垢を形成する微生物相の研究の進展により,微生物は単独の「種」としてではなく,常に他の種と相互作用を保ち,限られた遺伝情報をお互いに共有することで,微生物相全体が社会(コミュニティ)を構成しながら増殖していることが明らかになりつつある。このような土壌微生物相の複雑さ故に,土壌病害の防除は農薬や燻蒸剤などの化学物質の効果に依存してきたのだが,それは同時に環境汚染を引き起こし,安定した微生物コミュニティを破壊することで,土壌の肥沃度にも弊害をもたらした。このような現状をふまえ,変化した土壌微生物コミュニティを修復し,有益な方向に制御することで土壌病害を防除する方法が,土壌への有機物投与である。化学物質の効果が病原菌を死滅させるという一元的なものであるのに対して,有機物投与による病害防除は,土壌への有機物の還元,それに伴う微生物コミュニティの多様性の増幅,そして作物への養分供給など多元的な効果が期待できる方法である。このように,有機物投入による土壌病害抑制は,化学肥料や農薬などへの依存により生じた近代農業の弊害を修正すると共に,有機廃棄物を有効に再利用する持続的な方法である。
- 日本土壌微生物学会の論文
- 2002-10-01
著者
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