有機物と土壌病害(シンポジウム:有機物と土壌微生物-農業生産並びに環境浄化の視点から-)
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概要
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有機物とくに新鮮有機物の土壌添加は分解者である土壌微生物に栄養を供給すると同時に,土壌病原菌の活動あるいは生存に対して少なからぬ影響を与える。土壌病原菌は種類により腐生能力が異なるが,それに応じて新鮮有機物を栄養として利用する一方で,有機物を利用して増高した他の土壌微生物活動の直接・間接の影響を強く受ける。このような関係を土壌病害の防除に利用しようという試みが古くから為されており,それは土壌病害の生物的防除の幼稚な段階のものと位置づけられる。近年,わが国では,有機物施用事情が大きく変化して,(1)産業廃棄物,都市廃棄物のような系外有機物を含んで多種多様の有機物が,(2)生同然の未熟な状態で,しかも(3)大量に施用される。そして(4)自給率は低下しかなりの部分を購入に仰いでいる。最近,公立試験研究機関を中心に行われたこれら有機物施用についての多くの試験結果から,土壌病害に対する有機物施用の影響は次のように整理される。(1)有機物の種類,腐熟度(成分)の違いにより,(2)土壌の種類や管理(土壌微生物相)の違いにより,(3)病原菌の種類(腐生能力)の違いにより,さらに(4)作物の種類(原因不明)の違いにより異なり,土壌病害の被害軽減効果の認められた例はあるが,全く影響のない例,逆に被害を助長した例も少なくない。したがって特定の作物の特定の病原菌による土壌病害に対する特定の有機物の施用効果とくに有効な事例を一般化して考えるのは危険であるといえる。結局,一般的には,有機物は十分に腐熟したかたちで,輪作を励行するなど土壌病原菌の密度が急激に高くならないような状況のもとで施用して,土壌の物理性・化学性の改善による作物の土壌病害に対する抵抗力向上を期待するべきものである。新鮮有機物を土壌病害防除の目的で施用する場合には,有機物の種類,作物・病害の種類等施用条件に留意して,被害の助長や副次的障害の起こらないようにする必要がある。有機物施用の土壌病害に対する影響については,病害菌の活動や生存に及ぼす微生物活動の影響と,作物体の抵抗性に対する影響という両視点からの解析的検討が必要である。
- 日本土壌微生物学会の論文
- 1984-12-20
著者
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