タバコモザイク病の土壌伝染について
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概要
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1)タバコモザイク病が100%発病した畑では,翌年の移植時期(5月)に土壌中にTMVが存在し,そこに植えられたタバコでは45〜58%発病して本病の土壌伝染が実証された。しかし1年間タバコを休作して2年目に植えると全く発病しなくなった。2)病葉汁液を土壌中に加えても,40日後までにはTMVの急速な不活化はみられなかった。また土壌中に加えられた病葉汁液あるいはり病タバコの細切根は120日後でも強い病原性を示した。3)タバコにTMVを接種して6日後にその根からTMVが滲出しはじめ,25日後から滲出するTMVが著しく増加した。4)り病したタバコを引き抜いた後の病土と健全な土壌の層を重ねて毛管水を通過させても,TMVは移動しなかった。一方土壌に病葉汁液を加えて作成した病土に,水を加え吸引ろ過して洗浄を10回繰り返してもろ液にTMVが存在し,15回洗浄したあとの病土に植えられたタバコは激しく発病した。5)厚さ3cmの病土層を垂直的に位置をかえて健全土にはさみタバコを植えたところ,病土層が地表面にある場合にのみ発病した。また根部にTMVを接種したタバコでは50日以後に病徴をあらわし,地上部に接種したタバコに比べ長い期間を要した。6)健全土壌に病葉を5,000倍に希釈した汁液を土壌の1/5量加え,これに植えたタバコでは発病したが,10,000倍以上に希釈した汁液を加えた場合には発病しなかった。7)病葉汁液を土壌の層を通過させると,TMVが土壌に吸着されてろ液中のTMVは減少した。TMVの土壌による吸着作用は土壌の酸度によって異なり,酸性の土壌では吸着が大であった。また25点の土壌について吸着率を見たところ,最高は99.7%,最低は31.7%で異なる土壌の間で大きな差があり,一般に砂土では吸着率が低く埴土では高かった。また吸着率の異なる土壌に1,000倍に希釈した病葉汁液を土壌の1/5量加えてタバコを植えたところ,吸着率の高い土壌では発病が顕著に少なく,吸着率の低い土壌での発病は多かった。8)タバコ産地から集めた57点の畑土壌でのTMVの残存期間は7ケ月〜21ケ月間で,土壌によってかなりの相違があった。各土壌におけるTMVの残存期間と土性区分との間で明らかな相関が認められなかったが,土壌のTMV吸着率と残存期間との間には有意の相関があり,吸着率の高いものでは残存期間が短かかった。
- 日本土壌微生物学会の論文
- 1967-12-15
著者
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