ボードレールのマルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール評に関する考察
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概要
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シャルル・ボードレールによる,マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモールに関する評論は,「幻想派評論」1861年7月1日号に初めて掲載されるが,これはもともとユゴーをはじめとして,ゴーティエ,バンヴィル,ルコント・ド・リール等の当代のもっとも重要な詩人たちの解説とともに,ウージェーヌ・クレペ編集による『フランス詩人集』のために書かれたものであった。このプレイヤッド版にすればわずか4ページにも満たない省察のなかで,ボードレールはデボルド=ヴァルモールにたいして,他の巨匠たちと同様に惜しみない賛辞を送っている。さてここで注目すべきなのは,彼女がボードレールによって賞賛されたほぼ唯一の「女流」文学者であるということだ。これは彼がデボルド=ヴァルモールとほぼ同時代のジョルジュ・サンドへあびせた嘲罵や,「ジュール・ジャナンへの公開状草案」のなかのデルフィーヌ・ゲーにたいする言説を考えてみれば,その特異性はいっそう明らかである。彼女の作品にたいするボードレールの好意は,一口で言えばその「女らしさ」に起因している。本論おいては,マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール評のなかで展開される二重性を,そこにあらわれるジェンダー観に重点を置きつつ考察することを目的とするものであるが,まず前半部において当時の社会状況とジェンダーの関係,さらにデボルド=ヴァルモール自身について触れ,次に後半部において評論の分析を行なう。
- 日本フランス語フランス文学会の論文
- 1996-11-20