農牧林家と企業の連携による砂棘栽培に関する一考察 : 内蒙古自治区和林格爾県の事例を中心として
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概要
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本研究は,経済がたち遅れている中国の西北地域において,政府が森林造成と利用(林産業の発展)を目的に採用した企業参入政策の導入後における各農牧林家の栽培の現状を把握し,現在の課題を明らかにすることを目的としている。本論文によって次の2点が明らかになった。(1)調査地域の個別農牧林家による砂棘栽培には,企業と連携していない旧品種栽培タイプと,企業と連携している新品種栽培タイプの2形態が存在する。それら2形態において栽培された砂棘の利用方法は共に,果実の販売及び落ち葉を燃料として利用することとなっている。しかし,旧品種栽培タイプには様々な問題点が存在する。旧品種の砂棘林は分散しており,砂棘には棘が多く,採取条件が劣悪で,さらに果実の販路が確立されていないなどの悪条件下での経営を行っている。その上,砂棘栽培といっても撫育・管理作業は一切行っていないことから,今後,砂棘林の枯死,そしてそれを栽培する農牧林家の収入減少に伴い生活にも支障が発生すると予測される。一方,企業に提供を受けている新品種の砂棘を契約栽培している農牧林家は管理が行き届いており,安定的な収入を得ている。(2)2形態の農牧林家の砂棘栽培は共に,農牧林家の家計収入の大きなプラスとなっているが,両者において,収入の格差が生まれている。その原因は,企業と連携するためには資本金と労働力が必要であるが,それに対応できる農牧林家と対応できない農牧林家に二極化したことによっている。今後は,政府が農牧林家間における収入格差を縮小するため,先ず全ての農牧林家が企業と連携することができる枠組み構築が必要であろう。次に投下資金を持たない農牧林家に対しては,成林段階に至るまでの育成段階においても収入を得られるよう,補助金の交付の枠組みの構築が必要であろう。最後に砂棘栽培における労働生産性を上げるべく全作業過程における機械化を促進させる必要がある。
- 森林計画学会の論文
- 2007-06-30
著者
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- 有永明人・笠原義人編著, 『戦後日本林業の展開過程』, 筑波書房, 一九八八年三月, 二七〇頁, 二五〇〇円