日本の文化人類学的研究における課題と展望 : 個人の研究史をとおして(第6回日本文化人類学会賞受賞記念論文)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
日本を文化人類学的な研究対象とすることは、文化の現状を考え文化人類学という学問領域が置かれている環境を考える時、文化人類学は有利な点と克服しなければならない課題の双方を抱えることになると考える。その課題のうちいくつかを取上げても乗り越えるには大きな努力は要求されるものの、一方では文化人類学の本領を発揮できる挑戦するに値する課題でもある。成功するならば、文化人類学の理論と方法に発展をもたらし、文化的・社会的に深刻化している問題を解決するうえで文化人類学の独特の効用を他に示すこともできる。日本研究は、どの地域、どのテーマを研究対象として選び取っても厖大な他領域における先行研究と蓄積された分析されていない民俗的歴史的資料がある。これらの先行研究や資料を文化人類学的に使いこなすことは実に挑戦的である。また、日本人における「日本の均質性と持続性」へのゆるぎない確信を砕くことは、広い人気を誇る日本文化論への対抗的研究を行うこととも相俟って、挑戦的である。それは、日本社会にそして日本文化に現実には存在し拡大しつつある裂け目が「日本文化の均質性」の誤認のために覆い隠されている結果生じている現在の社会的問題の解決に糸口を提示することにもつながる。
- 2012-03-31
著者
関連論文
- 悲惨と不幸の癒し : その共通体験としての通過儀礼
- メノポーズ : そのパラダイム転換 : 文化人類学から見た更年期女性
- 学会名称変更の是非について : 審議提案の経緯と理由
- 医療人類学から見た東洋医学(第58回日本東洋医学会学術総会)
- ヘルスサイエンスと人類学 (特集 保健と医療の人類学)
- 医療の移り変わりからみた医師と患者の関係 (特集 医師と患者)
- 多様化する世界における「健康観」再考(第39回日本理学療法学術大会 シンポジウム : 健康の視点)
- 世界にみる健康観(健康の視点)
- 医療人類学からみた今世紀の医療 (特集 医療はどう変わるのか)
- 病と癒し : 今と昔
- 病気観の普遍性と多様性--医療人類学の立場から (特別企画 精神医学・医療の国際比較) -- (精神医療の普遍と特殊)
- 病いと癒し : 昔と今
- 日本人の"人格"についての認識と臓器提供者の遺族への対応
- グローバル化と生命倫理
- 社会・生活の中で 文化人類学の立場から老いと痴呆を考える (増大特集 痴呆の生活支援--障害の理解からリハの実際まで) -- (痴呆を理解する)
- 文化人類学からみた更年期女性
- 生と死の記号学(6)(最終回)終りのない兵士の存在
- 医療人類学から見た東洋医学(第58回日本東洋医学会学術総会)
- 移植法改正だけでは何も進展しない 必要なのは臓器提供を納得できる明快なロジック
- 特論 医療・福祉と民俗学:「民俗」の再考と再生をめざして (特集 日本民族学の研究動向(1997〜1999))
- 特別記事 『からだの文化人類学』の著者波平恵美子氏に聞く 現代人がなくしてしまった身体感をどう取り戻すか
- 日本の家社会 (特集 アジアの家社会)
- 死の「成立」、死体の処分、死者の祭祀をめぐる慣習と法的環境との齟齬 (シンポジウム・死そして生の法社会学) -- (全体会『死そして生の法社会学』)
- 医療は文化人類学における〈周辺〉か ( 周辺への/周辺からの社会学)
- 日本の文化人類学的研究における課題と展望 : 個人の研究史をとおして(第6回日本文化人類学会賞受賞記念論文)