慢性腎臓病(CKD)の病態解明を目指して-レニンアンギオテンシン系(RA)を中心に-
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概要
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CKD(chronic kidney disease)は進行すれば末期腎不全に至るが、それのみならず、心血管イベントの独立した危険因子である。その原因として体液貯留、貧血、カルシウムリン代謝異常、レニンアンギオテンシン系(RA)亢進など疾患特有の因子が挙げられる。RA系亢進による血行力学的作用の結果として、糸球体高血圧による硬化、細動脈収縮による尿細管間質線維化、塩分貯留による高血圧、アルドステロン産生賦活等の作用がおこり、腎障害は助長される。1990以降RA系の多彩な非血行力学的作用やカスケードの詳細が解明され、RA系はCKD各病態に応じて種々のメディエーターと複雑に絡み合っていることが報告されてきた。アンギオテンシンII(Ang II)の臓器障害は主にアンギオテンシンタイプ1受容体(AT1R)を介する作用であると理解されている。もう1つの受容体であるアンギオテンシンタイプ2受容体(AT2R)を介する作用は全般的に臓器保護的と言われているが、各種病態によってはAT1Rと相乗的な作用をもつことも指摘されている。尿細管間質障害の機序の1つとしてepithelial mesenchymal transition(EMT)が注目されている。我々はEMTに関与するmetalloproteinase(MMP)およびその転写調節因子であるEts-1が進行性腎疾患モデルの腎組織で明らかに発現増加をおこすことを以前報告した。最近RA系はこのEts系とcross talkingすることが解明された。RA-Ets連関はCKD進行に関与している可能性があり、今後の研究が注目される。
- 2012-07-31
著者
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