抽出温度が希水酸化ナトリウム抽出腐植の特性に及ぼす影響(1) : 室温抽出腐植と加熱抽出腐植の比較
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概要
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火山灰土壌を主とする127点の試料を用い,0.5%NaOHによって,室温条件(30℃, 1時間振とう)と従来の加熱条件(100℃, 30分間)で抽出された腐植全体の特性を比較し,抽出温度が腐植の抽出量,光学性に及ぼす影響を検討した。1. 室温抽出は加熱抽出に対し腐植抽出量が5〜50%減少したが,CDを抽出炭素量で除したCD/Cは上昇し,腐植の黒色度そのものは強まった。室温抽出での抽出量減少率の大きい試料ほどCD/Cの上昇率が大きかった。また,CD/Cの高い腐植ほど室温で容易に抽出された。2.室温抽出による腐植抽出量の減少分は室温抽出残渣を加熱抽出(逐次加熱抽出)することで回収され,加熱抽出腐植は室温抽出腐植の加熱物と逐次抽出腐植の混合物と考えられた。逐次加熱抽出腐植は低腐植化度の腐植を含む土壌に多く加熱抽出量の約50%を占め,そのCD/Cは低く室温抽出腐植の約1/2の値であった。3. 室温抽出腐植を沸騰水中で加熱処理(100℃30分間)するとCDが上昇し,腐植は加熱処理に対して黒色度を増す変化をした。この変化は低腐植化度のものほど大きかった。4. 土壌のCa飽和度が上昇するほど,腐植が室温で抽出されにくくなった。以上より,加熱抽出は室温抽出と比較して,腐植を変性させるだけでなく,黒色度の弱い腐植を多量に抽出させ,この加熱して初めて抽出される質を異にする腐植が加熱抽出腐植と室温抽出腐植の特性の差異に大きく影響していることが明らかになった。
- 日本ペドロジー学会の論文
- 1994-06-30
著者
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