『仏説十二門経』『仏説解十二門経』とそれらにおける道安の「序」との対応について
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概要
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金剛寺の書写文献・安世高訳『仏説十二門経』『仏説解十二門経』は,1999年に発見されて以来ようやく十年を経た.その内容に対する研究は,いままで,イタリアの学者Stefano ZACCHETTIの幾つかの論文しかないのが現状である.ZACCHETTI氏は,この二つの写本について,安世高の著作としてはっきりと断定はできないが,ほぼ彼に属するものであると位置づけた.また,それに関して,なお幾つかの問題が残るものの,安世高以外の著者のものとして考えるのが難しい点が多いとも指摘している.氏の論証では,これらの写本は『仏説十二門経』『仏説解十二門経』,そして『仏説十二門経』に対する「解説」との三つの部分に分けられ,さらに『仏説十二門経』『仏説解十二門経』のそれぞれは,道安のいう『大十二門経』『小十二門経』に相当するという結論に至った.本稿では,氏の論証は新たな困難を引き起こすのではないかと指摘し,そして写本における氏の三つの分け方を検討した結果,『仏説十二門経』『仏説解十二門経』との二つの区分において十分あり得るため,新たに『仏説十二門経』に対する「解説」という第三区分を設定する必要はない.また,『仏説十二門経』は『大十二門経』に,『仏説解十二門経』は『小十二門経』に対応するのではなく,その反対,『仏説十二門経』は『小十二門経』に,『仏説解十二門経』は『大十二門経』に対応するという方が,正確なのではないかと筆者は指摘したい.
- 2012-03-25
著者
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