立正大学図書館所蔵河口慧海旧蔵文献
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概要
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本稿は,2009年に立正大学図書館から新たに発見された河口慧海旧蔵文献の紹介を目的とする.特に梵巴蔵にわたる将来文献の一覧と,Samvarodaya-tantraの翻刻を掲載する.彼の旧蔵文献には梵文写本2点,巴利語写本3点,西蔵文献約30点から成る将来文献の他に,洋装本,和装本の類も含まれている.それら文献資料に関する調査報告の結果は2012年に公表される予定である.ところで,立正大学に河口慧海旧蔵文献が所蔵されていたことは,従来見過ごされてきたといえる.実際には,彼の甥である河口正によって1961年に春秋社より出版された『河口慧海』の中に,河口慧海の旧蔵書の所蔵先として,同大学の名が挙げられていた.筆者は偶然にも,同大学図書館未整理資料の調査途中に河口旧蔵文献を見出すこととなった.その中には,本稿にて翻刻を示したSamvarodaya-tantra(1葉のみ)とGanda-vyuha(完本)の二種の梵文写本が含まれていた.本稿では特に取り上げていないが,Ganda-vyuhaは1934年から泉芳環と鈴木大拙によって出版される同梵本校訂本の底本となった写本そのものであることが判明している.校訂本では同写本が東京大学所蔵と説明されているものの,実際には所在不明となっていたものである.立正大学に所蔵されていた河口旧蔵文献は彼の死後,同大学内に一括譲渡されたものである.つまり,それら旧蔵文献は最後まで彼の手元にあった資料ということになる.河口旧蔵文献が立正大学へ譲渡されるに至る経緯の詳細は不明な点が多い.ただし,当時同大学学長であった石橋湛山,同教授三枝博音,同J.R.ブリンクリーらがそこに関わっていたことが調査の結果明らかとなっている.本稿では,河口慧海旧蔵文献の全体像を示したにすぎない.各資料に対する研究は今後の課題である.
- 2012-03-25
著者
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