1920年恐慌前後の日本綿業 : 中京圏の綿糸取引信用をめぐって
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概要
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本稿の課題は,服部商店を対象として,1920年恐慌が日本綿業に与えた影響とその再編過程に検討を加えることにある。1920年恐慌は,第一次大戦ブームで急速に拡大した綿糸先物取引履行に大きな影響を与え,綿糸商人の没落をもたらした。その一方で,大紡績資本は綿業界での地位を高めていった。綿業界では,この危機的状況を脱するべく「解合」が実施され,服部商店は,明治銀行や住友銀行の資金融通に支えられながら,東洋紡績との値合金支払いをめぐる交渉で有利な条件を獲得し,経営を立て直した。また,1920年代の操業短縮実施においては,綿糸商に代わって大紡績資本がイニシアチブを獲得した。しかし,大紡績資本間の利害意識が一致しなかったため,操業短縮は実施されなかった。このなかで,服部商店は中小紡績資本でありながら,綿布商の立場から操業短縮に反対姿勢を堅持していく。このように,1920年恐慌は,綿業界における綿糸商の影響力の後退をもたらし,紡績資本が市場秩序再編を主導する契機となったのである。
- 2011-11-25
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- 浦長瀬隆著, 『近代知多綿織物業の発展-竹之内商店の場合-』, 勁草書房, 2008年3月, iii+154頁, 3,150円