中華人民共和国建国初期におけるカトリック教会をめぐる動向について : 「人民」の創出と「内心の自由」をめぐって
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概要
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19世紀における共産主義思想の出現とロシア革命(1917年)以降,ローマ教皇庁及びカトリック教会は共産主義の無神論的理念を宗教としてのカトリックと教会組織への脅威と見なし,教会組織と信徒に対する共産主義思想の浸透の阻止を図った。第二次世界大戦終結後の冷戦構造の拡大に伴い,ローマ教皇庁及びカトリック教会はこの動きを加速させた。中国のカトリック教会は教皇庁の方針を踏まえ,中華人民共和国の建国前後の時期に国内の教会組織と信徒に対する共産主義思想の影響の排除を試みた。本来,教皇庁の一連の方針は教会組織の防衛と信徒の宗教的意識という内的領域の堅持を目指したものであり,政治権力との対決は意図されていなかった。中国のカトリック教会の場合も同様であった。だが,カトリック信徒が社会的少数派で,かつ新政権が無神論的理念を新たな政治・社会秩序の建設における理論的柱と位置付けている状況下において,中国のカトリック教会の行動が本来の意図とは無関係に,新政権への敵対的行為と見なされる事は不可避であった。
- 2012-02-25
著者
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