ヒトはなぜヒトになったか? : 共同作業と文化,言語(2011年,第52回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(横浜))
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ヒトに最も近縁な生物はチンパンジーである.ヒトとチンパンジーはおよそ600万年前に分岐した.その後,チンパンジーは熱帯林の生活にとどまっているが,ヒトは世界中に拡散し,高度な文明を築いている.それは,ヒトが文化をもち,それを継承,発展させることができるからだ.では,このような文化をもつための生物学的な基盤は何だろう?それは,他者の心を推測する「心の理論」の機能,さらに,その根底にある,三項表象の理解である.個人が何かを考えるだけではなく,互いに他者の心を推測し,外界に対する心象を共有することができて初めて,目的を共有し,共同作業が可能になる.言語は,それを円滑にする手段である.ヒトの子どもは離乳してもすぐに独力で食物を得ることはできない.ヒトは生業活動で共同作業が必須なばかりでなく,子育ても協力して行う共同繁殖の生物である.他者の心を理解する協力的知能こそ,ヒトに固有の能力である.
- 2012-03-01
著者
関連論文
- 創立50周年記念・公開シンポジウム「21世紀・日本の生物教育」
- 利他の心の進化 (特集 〈利他〉の心と脳・社会・進化)
- 動物行動から見た男女共同参画
- 進化からみたヒトの女性の特性(コメディカル教育講演,第15回国際女性心身医学会および第36回日本女性心身医学会学術集会報告)
- 北極の資源と地質(北極紀行(4))
- 北極探検と北西航路(北極紀行(3))
- 進化からみたヒトの女性の特性(コメディカル教育講演,第15回国際女性心身医学会(ISPOG2007)および第36回日本女性心身医学会学術集会)
- 哺乳類、鳥類、ヒト : 北極での暮らし(北極紀行(2))
- ヒトは共同繁殖 (特集 家族の子育て機能再考)
- こころと行動の性差--進化生物学の視点から (特集 性差からみた精神疾患)
- 進化的人間考(6)ヒトにはどんな性差があるのか?
- 進化的人間考(5)ヒトの食物と人間性の進化
- ヒトの進化と生活習慣病 (特集 生活習慣改善による疾病予防--エビデンスを求めて) -- (生活習慣と疾病)
- 進化的人間考(4)ヒトの子育て--ヒトは共同繁殖
- ヒトの脳の性差をどう考えるか?--研究の視座から社会的意味合いまで (特集 性差と脳)
- 進化心理学の誕生と展望 (特集 こころの進化と精神医学)
- 進化的人間考(9)ヒトの脳と行動の性差(2)
- 書評 安藤寿康著『遺伝マインド--遺伝子が織り成す行動と文化』
- 進化的人間考(8)ヒトの脳と行動の性差(1)
- 文明の先を見据える
- ヒトはなぜヒトになったか? : 共同作業,自意識,文化,言語(特別講演,今,心身医学に求められるもの-基礎から臨床まで-,第52回日本心身医学会総会ならびに学術講演会)
- 進化的人間考(10)三項表象の理解と共同幻想
- 進化的人間考(7)ヒトのからだの性差と配偶システム
- ヒトは共同繁殖 : 子どもの発達と社会的つながり
- ヒトはなぜヒトになったか? : 共同作業と文化,言語(2011年,第52回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(横浜))
- 進化的人間考(12)ヒトの進化環境と私たちの健康
- 進化的人間考(13)ヒトの適応進化環境と社会のあり方
- 進化的人間考(11)群淘汰の誤りとヒトにおける群淘汰
- 進化的人間考(15・最終回)人間の統合的理解の行方
- 『保全生態学研究』の掲載論文に見られる研究対象の偏り
- 進化的人間考(14)言語と文化