《ロ短調ミサ曲》の受容と現在 : その「普遍性」をめぐって
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
バッハの《ロ短調ミサ曲》は、昭和6(1931)年に、東京高等音楽学院(本学の前身)によって、両受難曲に先立ち、日本初演された。ただし〈クルツィフィクスス〉楽章は、明治26(1893)年に東京音楽学校(現東京藝術大学)によって、「富士登山」という歌詞のもとに部分初演されていた。《ミサ曲》に関する情報の摂取は早かったものの、ラテン語典礼文を歌詞とする作品の理解は、日本では容易に進まなかった。理解の鍵を握るのは、「普遍性」の概念である。普遍性への指摘はまず野村良雄(1949)によって行われ、小林義武の資料研究を通じて展開された(「エキュメニカル・ミサ曲」の概念)。最近の研究が指摘するのは、バッハの最晩年における〈ニカイア信条〉以降の補完が、ドイツ語カンタータからラテン語教会音楽への、当地のシフトを前提としたことである。バッハ自身が普遍性への意識をもち、宗派と時代を超えようとして完成させたのが《ロ短調ミサ曲》であった。
著者
関連論文
- モテット《イエスよ、私の喜び》BWV227をめぐって
- 座談会 ジョシュア・リフキン先生の公開レッスンと《マタイ》上演を振り返って
- モーツァルトの美意識を探る--管楽器の用法から (知られざるモーツァルト)
- バッハ演奏の諸問題 : 演奏史を回顧しつつ
- ベートーヴェンからの乾杯 : 《第九》の通念を問い直す
- ミサ曲のテキストと《ミサ・ソレムニス》
- ベートーヴェンにおける「ダイナミックな形式」の発明
- 古典主義美学における「様式」概念の新生
- バッハの現代--宗教,そして21世紀の演奏に向けて (バッハ--古楽器の宇宙)
- 座談会 百二十五年の歴史と新バイロイト五十年の年 (特集 バイロイト)
- クリストファ-・ホグウッドが語る,モ-ツァルト解釈の今日的視座 (モ-ツァルトの諸相--声楽曲・器楽曲を中心に)
- 多元的ソウル・ミュ-ジックがテクノ社会を揺さぶる (J.S.バッハの現代的魅力--生誕300年)
- 美学会創立五〇周年記念シンポジウム(『美学』二〇〇号記念特集)
- ワーグナーにおける救済概念の深化
- ワーグナーにおける「救済」概念の深化(美学会第四十五回全国大会報告)
- カール・ダールハウス(編), 『18 世紀の音楽』, Carl Dahlhaus (Hg.), Die Musik des 18. Jahrhunderts. (Neues Handbuch der Musikwissenschaft, Bd.5) Laaber : Laaberverlag, 1985, 434pp.
- J・マッテゾンにおける言葉と音楽
- 主に捧げる新しい歌 : J・マッテゾンによるルター精神の再興
- P. ファルティン, 「交響曲の変遷における声楽的なものと器楽的なものの記号論的次元」, Peter Faltin, Semiotische Dimensionen des Instrumentalen und Vokalen im Wandel der Symphonie in : ARCHIV FUR MUSIKWISSENSCHAFT, 1975 Heft I, pp.26∿38
- 書評 『パルジファル』ワーグナー 日本ワーグナー協会監修 三宅幸夫・池上純一編訳 ワーグナー協会二十周年にふさわしい周到かつ誠実な一書
- パルジファル演奏史--12のCDを比較する (特集 指揮)
- 優雅で質の高い--今年のエクス・アン・プロヴァンス音楽祭から (ヨ-ロッパ夏の音楽祭)
- バッハとドレスデン (日本音楽学会第50回全国大会総覧) -- (コロキウム)
- 現代のバッハ研究-6-バッハと象徴,そして修辞学
- バロック音楽におけるフィグ-ラ--修辞学的音楽論の一側面 (レトリック)
- ウィーン・フィル来日公演&サイモン・ラトル、インタヴュー
- モ-ツァルト研究の権威 ヴォルフガング・レ-ム博士が語る,モ-ツァルト研究の現在 (モ-ツァルト・シンフォニ-の周辺)
- 対談 演劇的に,音楽的にオペラを語る (特集 指揮)
- 《ロ短調ミサ曲》の受容と現在 : その「普遍性」をめぐって
- さまざまのフィグ-ル (モ-ツァルト) -- (プル-ラルなフィクションの方へ)
- 暗譜考
- 座談会--ドラマの中の死と救済 (特集 死と再生)
- コロキウムの総括 (日本音楽学会第50回全国大会総覧) -- (コロキウム)
- ヴィヴァルディと現代--音楽の娯楽性の再考 (ヴィヴァルデイ)
- 巨星の時代は終わったのか… (現代オペラ界の巨星たち)
- 国際モ-ツァルト・シンポジウム,レポ-ト--今日のモ-ツァルト研究が提示されて
- 業火の語るもの--における終末の再考 (《指環》の諸相--を中心に)
- バイロイトの音楽面での真価に触れて--Bunkamura落成記念・バイロイト音楽祭日本公演をきいて
- 提起された多彩な論点--J.S.バッハ生誕三百年記念「バッハへの新しい視点」
- 深い理由をふまえて自由さへ--「日本バッハ・アカデミ-1984」から
- ルネサンス・バロック音楽 (秋の異色レコ-ドより)
- ジョシュア・リフキン先生の公開レッスンと《マタイ》上演を振り返って
- モテット《イエスよ、私の喜び》BWV227をめぐって