音韻論的で音声学的な変化について
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概要
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言語音声の変化は音韻論的な立場や音声学的な立場から研究されてきた。これに加えて,両者に跨る立場が主張される場合も有る。本稿では,音韻論的かつ音声学的アプローチに加え,言語が話される状況や言語用法の要因をも考慮に入れることにより,音声変化の研究がより前進することを提言する。子音は第一次子音推移,第二次子音推移と,歴史的に観察されている。文脈に依存するものではあるが,現代英語でも子音が変化する例がいくつか見られる。例えば,強勢の無い母音の後で [.] が [n] に変わる,強勢を持つ母音と強勢の無い母音に挟まれると [t] や [d] が [.]に変わるなどである。母音は大母音推移が歴史的に観察されている。現代英語では,複数の母音,例えば [a] [e][.] [.] が順々に変化する例が,ある特定の状況で観察されている。また,特に [a] の母音が文脈に依存し,変化の度合いが異なることも観察されている。鼻音の前では最も変化しやすく,無声破裂音の前では変化が起こりにくいなどの例が特定の地域で観察されている。子音や母音が変化する理由や,変化の型,もしくは一定の傾向が音韻論,音声学,音声科学を通して研究されている。これらの変化は,特定の言語が持つ音声体系に従って音声変化が起こっているものや,発声音の聞きやすさに応じるような傾向で変化が起こっているものが観察されている。音声変化は特定言語の音声体系や言語上の文脈の影響のみからでは説明できない場合もある。特定の話者やある状況に限られた例については,その変化の方向や程度を種々の観点から長期的に調べ説明する必要がある。そのひとつとして,言語の使用頻度を考慮に入れることが必要な場合もある。また,発話の状況や種類を考慮に入れることも考えられる。強勢移動は子音や母音に比べ,歴史的に観察されているものは少ない。現代英語では,韻律音韻論でリズム規則に基づく説明や最適性理論で,強勢の位置が少なくとも1つの弱勢を必要とし,弱勢の位置はせいぜい1つの強勢を許容するという制約で説明されるものである。元来thirte.en me.n と発せられる句が thi.rteen me.n と強勢の位置を変えて発せられる例についてである。言語発声におけるリズム感覚を強勢移動の分析に応用することで,種々の現象を説明することができる。落ち着いて話した場合と急いで伝えた発話での違いなどを分析することも必要であろう。この様に,音韻論の枠組みで説明されている規則や制約を社会言語学的観点や言語用法の観点から再度観察し直し,音声学的分析によって説明を試みることによって,新たな知見が得られると思われる。
- 2012-02-15
著者
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