標準化を活用したプラットフォーム戦略 : 新興国市場におけるボッシュと三菱電機の事例
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概要
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本稿では、ボッシュと三菱電機の新興国におけるオープンプラットフォーム戦略の実態を明らかにし、それが新興国で有効に機能しうるメカニズムとそのための主要要件を如何に満たしているかについて考察した。既存のプラットフォーム論やコンセンサス標準論に基づいて整理した要件は、「インターフェース(IF)のマネジメント」「依存性のコントロール」「インテグレーション」「コアのシェア」「ターンキーソリューションの提供」「組織」の6つである。プラットフォーム提供企業は、「IFのマネジメント」「依存性のコントロール」によるプラットフォームの寡占状態の創出と「インテグレーション」による価値拡大によって、IFを標準化しオープンにしても、自社の利益を作り出す。「コアのシェア」が高ければ、これらはより一層簡単になる。品質と拡張性を保証したプラットフォームをフルターンキーソリューションとして提供することで新興国では迅速に普及しやすくなり、規模を達成することが可能となる。組織はこうした戦略の構築・実施を支援する。2社の事例を分析した結果、両者のプラットフォーム戦略が主要要件を満たし、新興国で有効に機能しうると結論付けられた。本稿で取り上げたケースは、プラットフォーム戦略という意味では従来の研究の延長上にある。しかし、自動車やFA機器といったすり合わせでメカニカルな製品においても、新興国では標準化を活用したプラットフォーム戦略が展開されている実態、さらに、ソフトウェアによるハードウェアのコントロールが重要なカギとなっている現状を示した点で注目に値するものであり、ここに本稿の貢献がある。しかし、なぜ両社がこのような標準化を活用できたのか、どのように標準化プロセスをガバナンスしているのか、については残された課題である。また、両社の新興国での戦略の成否についても結果はまだ出ていないため、今後、検証の意味から両社の動向を観察する必要がある。
- 2011-09-30
著者
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小川 紘一
東京大学大学院経済研究科ものづくり経営研究センター
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小川 紘一
東京大学 知的資産経営・総括寄附講座
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立本 博文
兵庫県立大学経営学部
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高梨 千賀子
立命館大学
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立本 博文
兵庫県立大学
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小川 紘一
東京大学
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