スロー・クローズによるソーシャル・イノベーションの意義と可能性 : ガンジー思想を手がかりとして
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概要
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論説(Article)今、日本の衣の自給率はほぼ0%である。食とともに人間が生きる上で必要不可欠なものでありながら、だ。自らの手で衣を一からつくることは想像すらできないであろう。本稿では、危機的社会といわれる現状を踏まえた上で、今早急に求められている持続可能な社会の実現を可能にするオルターナティブな経済理論を、主にマハトマ・ガンジーの思想を基に検証し、その実現に寄与するのではないかという概念装置として、「スロー・クローズ」を提示する。スローとはslow、クローズとはclothesのことで、具体的には、種から綿を育て、糸を紡ぎ、布を織るという、一連の手仕事を通じて起こりうる社会的効果のことを意味する。ガンジーは、糸紡ぎを人間の自立と平等の象徴とし、自分たちで生活必需品を生産し自分たちで消費するという経済システムによって、相互扶助で成り立つ理想的社会を目指したのである。現代にこの理論を当てはめることは難しいにしても、あるインパクトを持って人に作用し、新たな価値観を創出するきっかけになると考える。本稿の目的は、ソーシャル・イノベーション研究コースの枠組みに則った社会実験的アプローチという実践研究を通して「スロー・クローズ」の社会的有意性を証明し、問題点を明らかにするとともに、「スロー・クローズ」によるソーシャル・イノベーションの可能性を導き出すことである。そして、これからの社会にどのような形で筆者本人が貢献していけるかを含め、「スロー・クローズ」普及の展望と課題を提示する。