公立大学における教員養成の現状と課題 : アンケート調査の分析を通して
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概要
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本研究は、アンケート方式により、公立大学における教員養成の規模や組織体制、教員の現状認識、教育実習の実態、また現在すすめられている教員養成改革への取り組みなどを分析し、公立大学における教員養成の現状と課題を明らかにし、本学教員養成の課題や展望に資することを目的とするものである。考察の結果、以下のことが明らかとなった。その一は、公立大学はその多くが歴史の浅い小規模の後発大学であり、教員養成を主目的とはしないが、地域の付託を受けた高等教育機関として地域貢献や進路保証の側面から教員養成に責任をもたねばならないという二面性をもっており、ここに公立大学がもつ教員養成の基本的課題や困難性が存在するということである。その二は、公立大学における教員養成の位置づけの不明確さである。学生の教職志望意識に落差があり、教員の教職のとらえ方も不明確ななかで、公立大学がめざす教員養成像とそれをふまえた制度や組織改革の展望をいっそう明確にすることが求められている。その三は、教員養成の組織的指導体制の未整備についてである。公立大学では一般的に専任教員が少なく、きめ細かな指導ができないため、全学的教職担当組織において、全学を見通した課題の提示や統一性のある活動により、責任ある指導体制をどのように構築するかが問われている。その四は、教育改革、教員養成改革動向への対応の不徹底である。教育改革の動きが急であるため、その対応におわれる状況のなかで、地域に責任を負う公立大学として必要な対応を試みながらも、明確な展望をつかみ得ていない実態が明らかとなった。