愛育班活動の変遷と今後への期待
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概要
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愛育班は1936年に恩賜財団母子愛育会の指導で始まった住民によるボランティア組織である。当時は農村における母子の死亡率を下げることを目的とレ健康教育を仲介する役割が大きかった。近年では全国的な都市化・少子化が進み、愛育班活動も転換期を迎えている。そこで、地域住民組織の一つである愛育班の活動の現状を分析し、住民ボランティア組織としての意義を検討し、地域の子育て力を獲得・回復するための地域住民活動の育成に資することを目的として調査研究を実施したので報告する。調査方法としては、代表的な愛育班活動の視察、班長会議への参加や、これまでの活動の記録、愛育班員による手記の検討を行い、その活動を分析した。その結果、愛育班活動の機能を以下の4つに分類した。1)地域住民と保健福祉行政を結びつける活動 健康診査の勧奨や保健知識などの健康教育を住民に周知させ、サービスを利用しやすくする活動である。この形の支援は愛育班発足当初からのもので、専門職が班員を指導し、班員から地域住民へ伝達する活動であった。2)地域住民の健康を守り、促進する自主的活動 生活習慣病などについて地域内で予防を呼びかけ、講座を開催するなどの活動である。地域の健康問題を見つけだして住民が認識するようにし、その上で解決方法に取り組む自主的活動である。3)専門職への橋渡し 健康や福祉の面で行政や専門機関の支援を必要とする住民の情報や、地域にある健康・安全・福祉上の問題を専門職(多くは保健婦)に伝え、対処を図っていく活動である。専門職ではない班員にとって専門職との連携は不可欠であり、班員から専門職や行政への支援要請という橋渡し役である。この活動は保健サービスが施策として充実してきた1970年代頃から多く見受けられるようになった。地域住民が抱えるニーズを班員が掘り起こし、専門職と相談しながら解決方法を構築していく方式である。4)地域住民同士を結びつける活動 子育てについて不安を持つ母親同士に対し仲間づくりをするなどの活動である。前記(3)で示した関係に加えて地域住民同士の交流を生み出すことを支援する。住民同士の交流が薄くなった近年、この活動の必要性と意義が大きくなった。
- 日本保健福祉学会の論文
- 2001-03-31
著者
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