家庭児童相談室を中心とした地域の相談機関の現状と課題 : S県の現状からの考察
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概要
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S県O福祉事務所併設の家庭児童相談室(以後家児相と略記)の1989年から97年まで9年間の学齢前すべての相談ケース、249例について調査を行い、現状を把握すると共に家児相をはじめとする子育て相談機関のあり方について考察を行った。(1)S県内の家児相は、1999年4月現在53室が設置されている。設置場所は、ほとんどが福祉事務所内であり、4ヵ所以外は非常勤相談員のみである。1997年の延べ相談受付件数は5万件を越え、うち3分の1は知能・言語相談であった。S県では家児相が3歳児健診の事後措置に関わっており、乳幼児期の相談が多かったと考えられる。(2)O家児相における過去9年間の、就学前年齢の相談ケースの実数249例(男児160、女児89)のほとんどが3歳児健診に関連したケースであった。大多数のケースは家児相の相談員による助言で終了しており、児童相談所へ引き継いだものは2件、保育所に引き継いだものが2件であった。相談内容では、夜尿に関するものが120件(48.2%)と最も多く、次いで知能・言語に関するもの67件(26.9%)、性格・生活習慣等が58件(23.3%)で、その他の相談種別はほとんどない。(3)S県における家児相の問題点としては、(1)地域住民からの認知が低い、(2)統計の取り方の関係で、実件数に比して延べ件数が過大に計上されている、(3)乳幼児の相談が多いのに相談員に専門性が低い、などが考えられた。(4)今後の家児相のあり方への提言としては、(1)開室時間、相談場所を住民の利用しやすい形態にする、(2)任用条件を相談傾向に合わせた条件にする、(3)統計の処理方法を実態の見える形にする、(4)家児相の運営経費を暫定的に補助金扱いにする、(5)保健所、市町村保健センターとの機関連携を密にし、母子保健に関わる相談も充実する、(6)家児相でも育児情報の提供を行う、などを挙げた。(5)地域における子育て相談機関のあり方としては、(1)各種相談機関の乱立と地域的偏在を是正する、(2)各種相談機関の役割と位置づけを住民に分かりやすくする、(3)相談担当者の専門性を重視し、機関連携等で保健婦の活用を図る、などの提言を行った。
- 日本保健福祉学会の論文
- 1999-10-31
著者
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