近江学園前史としての三津浜学園と「塾教育」の思想
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概要
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本論文は,1943〜1946年にかけて滋賀県に存在し,戦後に設立される近江学園の前身のひとつともいわれる「三津浜学園」について検討した.この施設の設立と運営には,近江学園の設立の中心メンバーである糸賀一雄や池田太郎らが関わっており,近江学園の設立にも影響を及ぼしていると考えられる.しかし,この施設は近江学園の設立の7か月前に閉鎖され,直接の継続がないことからその実像については大部分が不明であった.そして,これまでにもその実態は解明されてこなかったため,この学園と近江学園とがどのように関連するのか明確にはなっていなかった.そこで,新たに関連する当時の資料を収集して,施設の建物の概要,処遇内容,軍人援護会における事業の位置づけや運営費用の一部など,その概要をとらえた.また,設立の経緯については,下村湖人に共鳴した「煙仲間」の働きがあり,下村の提唱する「塾教育」の影響を受けていたと考えられる.そして,三津浜学園の実績は近江学園の設立にあたって,知的障害児と戦災孤児など知的障害のない児童との複合的な園児構成を実現させるよりどころであった.さらに,その背景にある「塾教育」思想は,その後の近江学園の取り組みに貫かれた基本理念の形成に対して重要な影響を与えている.
- 2011-08-31
著者
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