狩るものとしての「野生」:アフリカにおけるスポーツハンティングが内包する問題 : カメルーン・ベヌエ国立公園地域を事例に(<特集>「野生生物」との共存を考える)
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概要
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本稿の目的は,アフリカにおける娯楽のための狩猟,スポーツハンティング(sport hunting)を事例に,グローバルな価値づけがなされた野生動物の資源利用の裏側にある歴史的な権力問題を指摘することにある。アフリカにおけるスポーツハンティングは,植民地時代の西洋人が権力や富を象徴するためにアフリカの野生動物を狩猟したことに端を発する。現代になり,人間中心主義からの脱却を目指す環境思想からの狩猟に対する倫理的批判が隆盛したことや,スポーツハンティングを起源とする植民地主義的な政策に対する批判を一因として住民参加型保全の理念が台頭したこと,そしてエコツーリズムが勃興したことから,スポーツハンティングは影を潜めた。ところが,スポーツハンティングは現在まで消滅することなく活発におこなわれており,近年,莫大な経済的利益を生み出す管理された「持続可能性」のある狩猟として,住民参加型保全政策を支える主柱となると,一部の政府や保全論者に注目されている。しかし,カメルーン・ベヌエ国立公園周辺でおこなわれているスポーツハンティングは,その地域の住民に雇用機会と利益分配を付与する一方で,植民地時代を彷彿とさせる「自然資源利用権の収奪」という重層的なインパクトをもたらしていた。この背景には,「持続可能性」という環境思想が,歴史的な権力構造を背景に地域住民による狩猟を断罪し,スポーツハンティングを正統化するために,新しい植民地主義的な政治的言説によって解釈されているという現象があった。
- 2008-11-15
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