トプカプ宮殿美術館所蔵のサライ・アルバムにおける半円形図案画の考察 : 馬具に見る東西交流の痕跡
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概要
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トプカプ宮殿美術館には15世紀末、白羊朝の支配者ヤアクーブ・ベクが編纂させたといわれている詩画帳(アルバム) (登録番号H.2153, 2160)が残されている。14世紀・15世紀のイスラーム世界の著名な書家や画家の作品、図案画などが台紙(縦約50cm、横33cm)に貼られた作品で一種の粉本として編纂されたと考えられる。16世紀前半にイランのサファヴィー朝からオスマン帝国に献上されて以来、国宝としてトプカプ宮殿に保存された。上記2冊の詩画帳の総フォリオ数は289で、書の総数が1448点、絵画の総数は710点を数える。H.2153には20点の半円形の図案画が含まれている。台紙いっぱいに貼られた墨画の図案画は、十分考察されることなく衣装の襟・肩の装飾である雲肩といわれてきたが、雲肩であれば下の部分が雲形でなければならない。しかし、半円形図案画はすべて下の部分が弧をなしていて、涎掛けのような形をしている。これらの半円形図案画が何のための図案であるのかこれまで本格的に研究されなかった。本論は、中国遼代の陳国公主墳墓の出土品(障泥)、日本の手向山神社、下関住吉神社などに保存されている馬具(障泥)、中国やイスラーム世界の絵画に描かれた障泥などから、これら20点の半円形図案画が、鞍の左右に下げられた障泥の図案であることを実証するものである。
- 2009-03-10
著者
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