脊髄損傷に対する再生療法の展望(<特集>明日の脳神経外科を拓く神経科学)
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概要
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近年の幹細胞を主とした再生医学の進歩により,中枢神経の変性疾患および外傷に対して,内在性神経幹細胞の活性化やES細胞,iPS細胞といった幹細胞治療が有効であることが明らかとなり,脊髄損傷の再生医療においてもこれらの細胞への期待が高まっている.しかしこれらES細胞,iPS細胞といった幹細胞が脊髄損傷に効果を示すのは,損傷後8〜9日目の亜急性期に投与された場合であり,損傷脊髄内に瘢痕が形成された慢性期には効果を示さない.治療を待機している脊髄損傷患者のほとんどはすでに慢性期であり,慢性期の治療が依然として重要な課題である.慢性期に効果が確認されている治療法はほとんどなく,唯一ポルトガルのエガスモニツ病院のCarlos Limaらによって始められた自家嗅粘膜移植法が治療法として報告されている.われわれは脊髄損傷に対し,幹細胞を含んだ組織である嗅粘膜を用いた組織移植を2007年から日本で施行し,その安全性と有効性を現在検討中である.われわれは臨床研究途上であるため,すでに発表されたLimaらの報告を中心に,脊髄損傷に対する嗅粘膜移植法を概括する.
- 2011-08-20
著者
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