農業に由来する生態リスクの統合的評価に向けて : 農薬・遺伝子組換え作物・雑草防除の生態リスク評価から全体のつながりを意識する
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概要
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農業は食糧の安定的な供給を第一の目的とする人間活動であるが、生態リスクを引き起こす複数の要因を含んでいる。この生態リスクは個別の要因ごとに評価・管理されているが、異なる生態リスク要因間にはしばしばトレードオフ関係が生じ、ある要因の生態リスクを低減すると別の要因による生態リスクを増大させてしまう。また、農業活動は経済行為であるため、経済性を無視したリスク管理は農業生産者に受容されない。したがって、これらの要素を統合した統一的なリスク評価を実施すべきであるが、その方法は確立されていない。そこで本稿では、農業に由来する生態リスクの要因として農薬の流出、遺伝子組換え(GM)作物の逸出、雑草防除を取り上げ、個別のリスク評価法を概説するとともに、これらの生態リスクを統合する方法論を検討する。生態リスクは、農薬とGM作物ではそれぞれ農薬取締法とカルタヘナ法に定められた方法で評価されているが、雑草防除には該当する法律がない。農薬は、水系生態系への影響を想定し、定められた緑藻類の増殖速度、ミジンコ類の遊泳阻害率、魚類の致死率を用いたハザード比(環境中予測濃度/急性毒性基準濃度)に基づいて生態リスクが評価される。GM作物は、農地周辺と輸送路を想定し、 GM作物自体の競合性、有害性ならびに交雑性を指標とした宿主作物との実質的同等性に基づいて評価される。雑草防除は、農地内とその周辺を想定し、雑草の発生量を指標とした経済的許容性に基づいて防除法が選択されており、現段階では生態リスクは考慮されていない。このように、リスク要因ごとに評価項目が大きく異なっており、単純な加算によって生態リスクを統合することは困難である。異なるリスクを統合する際、費用便益分析や多基準分析がしばしば用いられるが、これらの方法には一長一短があるため限定的な使用に限られている。より現実レベルでの意思決定に活用するためには、共通する評価フレームによる総合的なリスク評価が必要である。農薬、GM作物、雑草防除というリスクは、「農法」の中で極めて密接に関連している。したがって、農業由来の生態リスクを適正に統合するためには、バックキャスティング手法に基づく共通目標の設定と農法に基づく生態リスク評価が有効であると考えられた。
- 2011-07-30
著者
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永井 孝志
独立行政法人 産業技術総合研究所 化学物質リスク管理研究センター
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水口 亜樹
独立行政法人農業環境技術研究所
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池田 浩明
農業環境技術研究所
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永井 孝志
(独)農業環境技術研究所
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永井 孝志
(独)農業環境技術研究所有機化学物質研究領域
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浅井 元朗
(独)農研機構・中央農業総合研究センター
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水口 亜樹
(独)農業環境技術研究所
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池田 浩明
(独)農業環境技術研究所
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水口 亜樹
(独)農業環境技術研究所:(現)(独)農研機構・中央農業総合研究センター・北陸研究センター
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