インクルーシブ教育実践の理論的枠組み : イギリスにおけるInclusive Schools論に着目して
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概要
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本論文の目的は,イギリスのインクルーシブ学校論に着目し,インクルーシブ教育実践の内実を明らかにするうえで不可欠と考えられる学習観,指導観,および,インクルーシブな学校をつくりだす教職員集団論の視点からインクルーシブ教育実践の理論的枠組みを明らかにすることである。研究対象は,イギリスのインクルーシブ教育研究センター(Center for Studies on Inclusive Education)における理論的指導者であり,イギリスのインクルーシブ教育実践に大きな影響を与えているメル・エインスコウ,トニー・ブースらのインクルーシブ学校論を検討した。検討の結果,エインスコウらは「すべての子どもに応答することを試みるプロセス」とインクルージョンを定義しており,応答性がインクルージョンの重要概念として析出された。インクルーシブ教育実践の学習観では,子ども相互の協同的な関係性が学習のサポートのためのリソースとして強調され,他者への応答を生み出す学習として協同的な学習やアクティブ・ラーニングなどの教授アプローチが位置づけられている。教師の指導観では,特別な教育的ニーズを持つ子どもを含めて,生徒たちへの応答を保障し,インクルーシブな実践をする教師たち自身の既存の実践から学ぶことが重視されている。個々の教師のインクルーシブ教育実践をサポートし,学校全体としてインクルージョンを進めるための教職員集団の存在が重要であることが示された。
- 2010-03-31