看護職の組織内キャリア発達-組織と個人の適合過程-
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概要
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本研究の目的は、看護職のキャリア志向と職務特性の適合がキャリア結果に及ぼすメカニズムについて検討することである。分析枠組みは、平野光俊による男性ホワイトカラーを対象に実証研究された分析モデルを援用した。その結果、組織における個人の要因(キャリア志向)と組織の要因(職務特性)の認知的適合が高いキャリア結果を導き、認知的適合には、上司の垂直的交換関係の質が関与するという本モデルの仮説は支持された。また、副次的に試みたキャリア志向別に適合認知する職務特性が異なるという仮説も支持された。さらに検証の過程で、男性ホワイトカラーの場合とは異なった看護職に独特ないくつかのキャリア発達上の特徴が見出された。キャリア志向のボックスにはScheinのキャリア・アンカーのコンセプトから「Managerial」「Technical」「Security」「Autonomy」「Creativity」「Service」の6アンカーを置いた。看護職に特徴的なキャリア志向として、「Technical」と「Service」が抽出され、また、看護職の「Managerial」と「Technical」は対次元とはならないことが発見された。職務特性のボックスには、因子分析によって抽出された「タスク重要性」「自律性」「技能多様性」「同僚との協働」「タスク完結性」「同僚との相互依存」「職務からのフィードバック」を据えた。これらの因子はHackmanとOldhamの職務特性次元と類似していた。この内、看護職のキャリア志向と職務特性の適合認知の鍵を握る次元は、「技能多様性」と「職務からのフィードバック」であった。上司の垂直的交換関係の質が、キャリア志向と実際の職務との間の適合認知に効果をもつことが検証され、「育成学習促進」「役割自由促進」「モデリング促進」の内、最も説明力を持つのは「育成学習促進」行動であった。さらに、適合認知したキャリア志向の内、看護職に特徴的なキャリア志向であると考えられた「Technical」と「Service」に効果をもつ上司の垂直的交換関係として「役割自由促進」が検定された。一方、「モデリング促進」行動は、依存を強める説明を得た。適合認知が高まれば、成果変数としてのキャリア結果は良くなるという仮説は、「職務満足」「内発的モティベーション」「業績」ともに支持された。また、検証中、様々に問題提起されたのは、看護管理者のチェンジ・エージェントとしての役割と機能に関する内容であり、今後の研究課題として探求されなければならない。
- 2003-12-25