少子化と90年代高校教育改革が高校に与えた影響 : 「自ら学び自ら考える力」に着目して
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文の目的は,1970年代から継続的に行われている高校調査のデータを分析することにより,少子化や教育改革が,高校,とりわけ1990年代,2000年代に蓄積の少なかった上位高校に,どのような影響を与えたのかを実証的に明らかにすることである。得られた知見は以下の3点である。第一に,日本の高校は,少子化社会の中で,1校あたりの生徒数を減らすことで,学校数を維持してきた。しかし,上位の高校では入学定員を維持し続けたため,入学者の中学時の学力の分散が広がり,多様な学力層の生徒が上位高校へ入学することとなった。第二に,多様な生徒が入学してきているにもかかわらず,生徒の学習時間は増加している。それというのも,教師が多様化した生徒を個別主義的かつ面倒見主義的に学習指導をしているからである。第三に,教師が生徒の学習を,個別的に面倒をみることにより,生徒の「自ら学び自ら考える力」が身に付かないことが明らかになった。以上の3つの知見が提起する問題は次のようである。まず,上位校生徒の多様化により,高校階層構造が変容し,新たな局面を迎えている。そのため,上位高校は,エリート養成学校としての地位が危うくなるかもしれない。90年代の教育改革は「自ら学び自ら考える力」を強調し,かつては,それが教師を指導から撤退させた。そして,その結果,現在では教師が個別的で面倒見主義的な学習指導をすることにより,高校生の「自己学習能力」が身に付きにくいという意図せざる結果をもたらしたのである。
- 2011-06-10
著者
関連論文
- 現代高校生の進路選択 : 相談相手の選択に注目して(III-7部会 高校教育,研究発表III,一般研究報告)
- 2.地域高校生の進学規定要因 : 伊勢志摩地区における高校ランクと地域差の視点から(II-9部会 地域社会と教育,研究発表II,日本教育社会学会第58回大会)
- 少子化と90年代高校教育改革が高校に与えた影響 : 「自ら学び自ら考える力」に着目して
- 3. 高校多様化の課題についての国際比較研究 : シンガポールとの比較から。高校生文化と進路形成の変容(第3次調査)より(V-5部会 【一般部会】高校と進路指導,研究発表V,一般研究報告)
- 1. 教師の仕事の国際比較研究 : シンガポールと日本。「高校生文化と進路形成の変容(第3次調査)」より(IV-6部会 【一般部会】教員調査,研究発表IV,一般研究報告)
- 3. 単線型メリトクラシーパラダイムの再考 : 「高校生文化と進路形成の変容(第3次調査)」より(IV-9部会 進路と教育(2),研究発表IV,一般研究報告)
- 3. 高校階層構造と社会階層・進路・学習意欲 : 「高校生文化と進路形成の変容(第3次調査)」より(III-5部会 教育と階層,研究発表III,一般研究報告)
- 4. ゆとり教育再編期における教育実践と生徒文化 : 「高校生文化と進路形成の変容(第3次調査)」より(I-12部会 学校の教育実践,研究発表I,一般研究報告)
- 1. 学力・社会階層とトラッキング : 青少年期から成人期への移行についての追跡的研究(JELS)から(I-2部会 【一般部会】進路と教育I(社会的背景),研究発表I)
- 1. 中学生のケータイ・ネット利用にみる現代の生徒文化 : 首都圏X市における中学生対象質問紙調査より(II-9部会 【一般部会】中高生,研究発表II)
- 2. 学力の縦断的変化の分析 : 青少年期から成人期への移行についての追跡的研究(JELS)から(II-4部会 学力・学習(1),研究発表II)