社会問題としての児童虐待 : 子ども家族への監視・管理の強化(<特集>幼児教育の社会学)
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概要
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本稿の目的は,日本において児童虐待が社会問題化してきた過程について明らかにしたうえで,さらにその対応方法の問題点について考察することにある。その結果,児童虐待の社会問題化が幾つかの段階を経て拡大してきたこと,「激増」,「深刻化」というイメージがマスメディアによって流布されてきたこと,また社会的対応方法としてリスクアセスメントの方向へ向かっているがそれは結局すべての家庭を国の監視・管理下におさめることを意味することを指摘した。国家主導で,リスクアセスメントを導入することは困難を抱える家族を発見するためだが,それは児童虐待を社会問題としてではなく個別の家族問題として捉えられることに繋がる。また,児童福祉の現場では,児童虐待の背景は両親の心理的問題などではなく,むしろ社会経済的課題にあると長年見なされてきたが,マスメディアによって広まった児童虐待のイメージは,家族の養育機能の低下が原因であると信じさせてきた。そこで,すべての家庭が検査対象に拡大されているのだが,これは人的資源のロスである。教育社会学にできる貢献としては,実証的研究の蓄積,児童虐待に対するモラルパニックの客観的分析など,経験科学の立場からの研究結果の提供が考えられる。また臨床的には,当事者である親・子どもの視点から児童虐待という経験の意味を抽出したり,解決に資するような具体的な事項の特定を行うなどの貢献が可能であろう。
- 2011-06-10
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