保育者養成という現場の日常 : 人々を実践に向かわせる知の再構成(<特集>幼児教育の社会学)
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概要
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保育サービスの多様化が進み,保育実践にかかわる組織やそこで働く人々が相互に知を創造していく資質や能力を理解し,それを支援することが求められている。この研究の目的は,そうした実践知の刷新が何によって引き起こされるか,子どもが対象となるサービスの職業人に求められる知の再構成を保育者養成という現場の日常から明らかにすることである。本稿では,まず,制度に媒介された保育者養成,保育をめぐる市場とイデオロギー,学校教育および職場活動のなかでの保育者養成の内的矛盾について述べた後,保育と演劇という異職種間の提携によって編み直された学習活動の軌跡を振り返り,実践知の創造を支援する道具となる(1)知の体系,(2)相互作用としての質問,(3)状況の変化,(4)「その場」に即応する現場力,(5)学ばれたことと未解決の課題を具体的に例証する。さらに,公共ホールがアーティストを学校に派遣するアウトリーチと保育者養成の授業科目のなかに芸術における学習活動を位置づける立場の違いについて考察する。三年計画で実施された保育者養成校での演劇ワークショップは,保育の仕事で求められる実践課題の対象や動機と重ね合わさり,参加者の身体をとおして背後にある理論が実感されている。「学習活動の動機は,現実への理論関与である」とエンゲストローム(Engestrom)が指摘するように,「芸術における学習」は,知の循環を引き起こすひとつの契機になる。
- 2011-06-10
著者
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