モノと潜在性 : タルド的視点に基づく機械の民族誌の試み(<特集>動くアッサンブラージュを人類学する)
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概要
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本論文では、19世紀フランスの社会学者ガブリエル・タルドに着想を得た「モノ」への新しいアプローチを構想を試みる。近年、タルドへの関心が人類学で復活しつつある。この関心は、人間の行為の所与の条件となる単一の「自然」と、人間の創造的行為の産物である多数の「文化」の二項対立という従来の枠組みを乗り越える方法を模索する中から生まれてきた。そこで暗示されているのはモノについての言説ではなく、その構成そのものに焦点を当てた人類学の可能性である。本論文では、「相互所有」というモノ相互の特異な関係に注目したタルドの現代的な意味を確認した後、タイにもたらされた日本製の農業機械の事例を取り上げて、モノの内側にどのような関係が取り込まれており、それが移動の過程をへていかにして展開するのかを考察する。この事例では、設計の段階で機械に刻み込まれた日本の環境との関係が、タイの環境との不適応をとおして人々の前に浮かび上がってきた。このようにモノがその内に含み込んだ潜在的な関係を顕在化するプロセスを考察することは、人類学の鍵概念である比較や文脈といった概念に新しい角度から光を当てることでもある。
- 2011-06-30
著者
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