シンポジウム「統合医科学研究所(TIIMS)の紹介と今後の展望」(3)遺伝子機能解析から疾患解析へ
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概要
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疾患の発症には遺伝要因が関与することが多いし、環境要因も、生体の生理機能の理解なしには解明できない。我々は、主として線虫と培養細胞を用いて遺伝子機能解析を行っている。線虫には約20,000の遺伝子が存在しており、ヒトゲノム解読に先立って解読が行われた。形態が全く異なるにも関わらず、約6割の遺伝子は、ヒトなどの他の生物のホモログであると考えられており、既知の疾患遺伝子のホモログも多数存在する。ヒトなど哺乳類遺伝子で線虫変異体のレスキューが行える場合も多い。線虫では、RNA干渉法が発見されたことが有名であるが、餌として与える大腸菌に二本鎖RNAを発現させておくと、これを食べた個体あるいはその子供に標的遺伝子の機能低下を起こすことができる。線虫では、トランスジェニック個体を作成することも容易である。生殖細胞にプラスミドやPCR産物などのDNAをインジェクションすることで、トランスジェニック個体を作出することができる。遺伝子ノックアウトを取得するのは、一般的には、哺乳類と同様に多くの労を要するが、我々は、効率良く欠失変異体を分離することができて、世界のシェアの半数程度を保有している。実際、我々の変異体を用いて多数の学術論文が出版されている。ヒトでの多型解析などで見つかった疾患原因遺伝子について、これらを組み合わせることで、発症過程を詳細に解析し、さらにヒト細胞などで再現・検証を行うこともできる。
- 2011-06-25
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