シンポジウム「統合医科学研究所(TIIMS)の紹介と今後の展望」(2)関節リウマチの遺伝子解析

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全ゲノム関連解析が行われるようになり、多因子疾患の遺伝子解析が急速に進んでいる。多くのcommon diseaseは多因子疾患であり、遺伝子解析は病態解明や重症化・合併症の予測に役立つものと考えられる。また、薬理遺伝学的な解析も治療の進歩に寄与するであろう。本稿では、リウマチ性疾患のなかで最も遺伝子解析が進んでいる関節リウマチ(rheumatoid arthritis、RA)を取りあげ、発症、合併症、薬物反応性に関する遺伝子についての解析の現状とその意義について述べてみたい。現在、RAの疾患感受性遺伝子として報告されているものは30を超える。MHC領域、T細胞活性化やCD40シグナル伝達に関与する分子の遺伝子多型などが遺伝的リスク要因として報告されている。RAは遺伝的側面からみても病態に免疫学的機序が重要であることが明らかになった。RAに伴って生じる合併症のなかで最も重症なもののひとつであるアミロイドーシスにはSAA1遺伝子多型が関与している。リスクアレルを有する場合は、アミロイドーシスの予防という観点からも疾患活動性の抑制が重要になる。RAの治療薬である抗リウマチ薬については、メトトレキサートやスルファサラジンについて候補遺伝子アプローチによる薬理遺伝学的検討が行われている。一方、TNF阻害薬については全ゲノム関連解析から有効性に関与する遺伝子多型が報告されるようになった。これらは有効性・副作用の予測に寄与することが期待される。疾患の重症度や合併症に関連する遺伝要因は治療戦略の決定に、抗リウマチ薬の効果・副作用に関連する遺伝要因は個々の薬剤の選択に有用であると考えられる。一方、疾患感受性遺伝子の検討からは新たな創薬の標的分子が見出される可能性がある。このように、多因子疾患における遺伝子解析は診療や治療の進歩につながるものと期待される。
2011-06-25

シンポジウム「統合医科学研究所(TIIMS)の紹介と今後の展望」(2)関節リウマチの遺伝子解析

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