町家空間における箱階段の特質 : 箱階段のデザイン研究(1)

概要

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本稿は,伝統的町家などの象徴的な装置である箱階段の実体を考察している。その結果,筆者は次の要点を明らかにした。(1)箱階段は,町家の2階座敷へのアプローチ装置である。それらは2階座敷の整備が町家に広まると同時的に作られた。それゆえ,箱階段と2階座敷の関係性を指摘できる。箱階段は2ケ所に設置されることもあるが,その場合片方は裏の空間領域に置かれ,2階座敷へのサービス階段として利用された。(2)箱階段は,2階段座敷への昇り口を演出する装置である。それらは見せることを意識してそれぞれ個性的にデザインされた。一般に,押し入れなどが並ぶ装置ゾーンに置かれる。どの居室でも設置されるが,土間に直接置かれることはない。(3)箱階段は,はしご系の階段ではない。段が積み重ねられてできる基檀系の階段装置である。単独型の箱階段は,単体で製作されるか,ユニットに分割して製作される。その多くの構造は,枢組の箪笥に似て構成される。平面の大きさは畳1畳の寸法を越えないものが標準である。
日本デザイン学会の論文
1992-02-01