軽度精神発達遅滞を伴ったヒステリー患者の自立 : M子16才との関わりを通して
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概要
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ヒステリーの治療看護において重要なことの1つは、精神療法的に非支持的に接し、患者が自己を洞察する能力をいかに上手に引き出すかという点にある。Mは軽度精神薄弱である為、自己洞察をすることは困難と考えられた。彼女はいつも両手を胸におき、排泄以外のすべての点て介助を要し、礼儀は身についておらず、また精神薄弱児の二次的心理特性によるらしく、意志や感情を表現する能力も乏しかった。我々は半年間受容的な関わりをしたが、これらMの状態はほとんど変化しなかった。しかし、Mに女の子らしくなって欲しいという願いを持ち、日常生活行動を介助する中で、彼女のわずかな変化をきっかけとして、できそうなことを促し、もしもできた場合にはそれを認め、彼女に注目しながら関わりを続けた。Mは、しだいに他の患者との交流の楽しさを実感し、他の患者の行動を模倣することにより自発性が芽生えるようになった。胸で硬く握り締めていた手が次第にゆるみ、胸から降りて来た時、私達はそれを看護婦の働きかけがMの内面的変化をひきおこした具体的なしるしと考えた。我々が行動を促しほめることが、彼女には自分が期待され認められているということなのだという経験として積み重ねられ、このことが自己洞察が困難と考えられたMには有効だったと考えられる。1年3か月後、彼女はひとりで買い物に行くまでに成長し、そして退院していった。
- 日本精神保健看護学会の論文
- 1992-06-15
著者
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井上 弘子
北海道大学医学部附属病院 看護部
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井上 弘子
北海道大学医学部附属病院
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谷口 満里子
北海道大学医学部附属病院看護部総務委員会
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菅野 龍子
北海道大学医学部付属病院
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猪股 史子
北海道大学医学部付属病院
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菅野 龍子
北海道大学医学部附属病院
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