協同組織金融機関のリテールにおける顧客生涯価値 : 共分散構造分析によるマーケティング・アプローチの研究
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概要
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金融制度改革を経て業務展開の自由度が高まった結果、金融機関相互の競争は、かつてなく激しいものとなった。それは協同組合金融機関においても例外でない。信用組合や農業協同組合等は、普通銀行と異なり、組合員制度という組織特性を持つが、厳しい競争環境に置かれている点では同じである。その中では、マーケティング展開に積極的に取り組むケースも見受けられる。しかし、組合員制度が、それにどう影響するかについては、これまで十分に議論されてこなかった。そこで、本研究では、マーケティングをめぐる諸理論のうち、特に顧客生涯価値に注目し、協同組合金融機関に対するマーケティング・アプローチの有効性を検証した。顧客との長期・継続的な関係を基本とする顧客生涯価値は、今日ではマーケティングにおける中心課題となっている。そして、顧客生涯価値の構成概念には、協同組合金融機関の組合員制度と共通する部分が多いとも思われる。ここでは、それらに基づく仮説モデルを作成し、共分散構造分析による検証を試みた。仮説モデルは「期待収益性」「スイッチング障壁」「カスタマー・ロイヤルティ」を潜在変数としたもので、観測変数には「組合員維持率」や「組合員割合」といった組合員制度ならではのものを用いている。分析に用いたデータは、ある協同組織金融機関に依頼し、店舗単位で集計した顧客データの提供を受けた。この分析を通じ、組合員制度そのものが、顧客生涯価値の構成概念を内包したものであることが裏付けられた。また、それらが協同組合の業績にも少なからぬ影響を及ぼしている実態が明らかになった。ここから、より今日的な視点によるマーケティング・アプローチが、伝統的な組合員制度に対し新たな可能性をもたらすとの結論を得たものである。
- 2008-10-30
著者
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