CSRに関する概念的進化と今日的課題
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概要
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CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)という用語が今日、多くのビジネス雑誌やメディアに登場し、ビジネス界においてとりわけ多くの注目を集めている。それはまるで、「CSRインフレ」といった様相を呈している。相次ぐ企業不祥事もCSRの必要性をより一層喧伝させ、CSRは今後のビジネスの要諦として認識されている。しかしながら、わが国においてCSRという用語が使用されている場面や状況を精査すると、その用語は必ずしも統一された概念として使用されてはいないことがわかる。その概念はビジネス界のみならず研究者の間でも見解の一致をみていないといえよう。1970年代にわが国において「企業の社会的責任」が叫ばれて以来、「社会的責任」は企業やビジネス・パーソンにとって「耳の痛い」「アレルギーを引き起こす」用語と化し、どちらかといえば一般論以外では敬遠されてきた用語である。その後も、企業不祥事が発生するたびに、「社会的責任」の必要性が喧伝されるものの、それへの認識が持続性を持つことはなかった。さらに、企業の社会的責任が「CSR」と呼称されるようになり、かつてとは異なったイメージで受け入れられるようになった今日においても、企業の社会的責任(CSR)に対する基本的な理解を怠れば、CSRは一過性のブームに堕する可能性がある。以上のような視点から、本稿はCSRに関する概念的理解をその主要目的に据える。そして、CSRはその概念が即時的に決定されるものではなく、変転する環境に応じて可変的な概念であることを主張する。また、従来からCSRを研究対象としてきた「企業と社会(Business and Society)」という研究分野にしたがって、CSRの位置づけを明確化する。それにより、CSRは企業が社会にもたらされる成果を分析する概念の一構成要素に過ぎないことが明らかにされる。
- パーソナルファイナンス学会の論文
- 2005-09-30
著者
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