中国における学校体育目標とその歴史的形成過程に関する研究 : 「体力つくり」の位置づけを中心に
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概要
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中国では1980年代に入り,国家規模の改革が行われた。その流れを受け,学校体育でも体育教学大綱(日本の学習指導要領に該当する)の中心的目標が,伝統的な国家のための「体力つくり」から個性を伸ばすための生涯学習へと変更された。しかし,中国国内では未だに伝統的な国家のための「体力つくり」を中心とした体育が行われている。そこで本研究では,学校体育目標とその変遷,および教育現場が抱えている問題点を明らかにし,学校体育目標における「体力つくり」の位置づけと改革方途を考察した。中国の学校体育における伝統的な「体力つくり」は「国家の防衛と建設」のためのものであり,これは旧ソ連に存在した「労働衛国体育制度」における「鍛錬的体育」の特質を持っている。しかし,生涯学習時代では個性を伸ばすことが目標になるため,この従来の「体力つくり」の捉え直しや,豊かな身体知としての運動文化,従来の「体育」とは異なる身体教育など,多様で広い認識が要求される。したがって,変革期にある中国の学校体育では,要求されるこれらの内容が学習できる授業が展開できるよう,理論的実践的視点の整理が必要である。
- 日本教科教育学会の論文
- 2001-12-30