子どもの貧困研究の動向と課題
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概要
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本稿は,わが国で子どもの貧困研究を進めていくうえでの課題を提示するために,これまでの子どもの貧困・不平等研究の動向を検討するものである.縦断調査の量的データを基にした研究,子どもの主観から貧困の影響に迫っている研究,家庭での参与観察を基にした研究などを検討した結果,T・リッジの「子ども中心の視点(child-centred perspective)」による研究や,A・ラリューの子育て方法や家族内の相互作用の階級間比較による研究が,現在の到達点であると考えられた.しかし,いずれにおいても,家族の貧困が子どもに影響を与えていくプロセスを解明するには至っておらず,今後はこの点を追究していく必要性があることが明らかになった.その際,家族や教育システムなどの客観的条件と子どもの主観的意識との関連から分析を行い,「ライフチャンスの不平等」を具体的に把握していくことが最も重要であると確認された.
- 一般社団法人日本社会福祉学会の論文
- 2006-03-31