不適切な養育環境に育った子どもに対する援助 : 児童養護施設における実践事例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
不適切な養育環境は,子どもの発達に著しい影響を及ぼす.本事例は,不適切な養育環境で育った男児・Aが児童養護施設に保護されてからの2年間の実践記録である.彼の育った環境は,ネグレクトともいえる養育環境であった.彼の両親は,出生届けを出さなかった.そのため彼は戸籍もなかった.保護されるまでの養育環境は,アパートの一室からほとんど出されることもなかった.保護されたときはよちよち歩きでことばもほとんどなかった.保護時点での発達検査では,Aの発達指数は40であり,中度の「知的障害児」と診断された.集団生活に移ったAは,半年後の発達指数が65,2年後の発達指数は77と急速な伸びをみせ,「知的障害」と診断された原因が養育環境からくるものであることを示した.本小論は,Aの2年間の成長過程を発達検査の結果を中心に紹介するとともに,不適切な養育環境に育った子どもの援助として,発達段階を考慮した援助方針の策定と子ども集団のかかわりが重要であることを示した.
- 一般社団法人日本社会福祉学会の論文
- 2003-11-30