生活保護における「母子世帯」施策の変遷 : 戦後補償と必要即応原則
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概要
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生活保護は経済的困窮に陥った理由を問わず,無差別平等に給付を与える制度とされる。しかし現実には受給者の道徳性を基準にして,行政が裁量権を用いて特定の者を優遇し,別の者を排除する歴史が繰り返されてきた。本稿では,その最たる例である「母子世帯」(父-夫がいないことによる経済的弱者)への処遇について検討する。占領期には戦争未亡人-死別母子世帯への戦後補償が重視され,そのなかで「必要即応の原則」を明文化し,行政裁量を拡大することによって処遇を充実してきた。これに対し1970年代以降離別母子世帯が急増すると,拠出・貢献なしに給付されることによるスティグマが付与されるとともに,家族規範からの逸脱者であるとして行政裁量による排除の対象となった。現在のホームレスに対する道徳的選別による排除も,この行政裁量から生じており,その運用の恣意性について問題提起することも本稿の1つの目的である。
- 一般社団法人日本社会福祉学会の論文
- 2003-03-31