社会福祉実践における「他者」の問い : 脱近代ソーシャルワーク議論の意味
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概要
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社会福祉実践の理論研究において物語モデルをはじめとした「脱近代的」と呼ばれる実践に関心が集まっている。だが,ソーシャルワークの語る「近代」とは何であったかという根源を問う議論はあまり見られない。隣接領域の理論に負うところの多かった史的経緯を踏まえれば,他領域で取り入れられる脱近代の議論が,同様にソーシャルワークの世界に波及してくるのに不思議はない。しかし,脱近代の議論はともすればこれまでの専門職志向やソーシャルワークが自明とした価値について問い直すという意味を孕んでいる。このことは,従来のように新しいモデルを流行として取り入れることに心奪われている場合ではなく,ソーシャルワーク自体の存亡を含め真剣にこの問いを考える時期にきていることを意味する。本論では,近代の産物といわれるソーシャルワークにとってその「自己」として内面化した近代性とは何であったのかを社会的言説という地平において「他者」という概念から問い返し,ソーシャルワークとその対象(者)のおかれた語りの位置関係について検討することによって,脱近代議論の出現の史的必然性について論究する。そして,ソーシャルワークにおける「自己の問い直し」という新たな視点の提示を試みる。
- 一般社団法人日本社会福祉学会の論文
- 2001-08-31