20世紀転換期カナダ・オンタリオ州における女性運動家による「精神薄弱」母子問題の主張とその本質
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概要
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カナダ・オンタリオ州において20世紀転換期の比較的早期から「精神薄弱」女性の問題に着目していた女性運動家を対象とし,その主張の意図と背景について,当時の議事録,年報,および著書・論文を用いて究明した.社会改革運動団体であったカナダ女性会議は,人道主義を根拠として,「精神薄弱」女性の専門隔離保護施設の設置要求運動を展開していた.同会議の要求と期待を受けてオンタリオ州の行政官に任命されたH.マクマーチーにより,英米の知見の導入と州内における「精神薄弱」母子の悲惨な実態という具体的証憑を得て,彼女らの主張は「精神薄弱」女性の出産・育児能力の欠如,および「精神薄弱」遺伝論を根拠とした「精神薄弱」女性の出産予防へと変化していく.しかし,州財政の貧弱さ,社会的・政治的関心の希薄さ,そして女性参政権の未成立という時代的状況などを原因として,女性運動家による要求は部分的成果を上げたのみであった.
- 2010-11-30
著者
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