有明海問題の所在とその歴史的経緯(シンポジウム:沿岸海洋学からみた有明海問題)
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概要
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有明海問題はしばしば諫早湾干拓問題やノリ不作問題と混同して扱われるが,これらは有明海問題の重要な一部とみるのが適切である.ここでは有明海と同じ閉鎖性海域である瀬戸内海の歴史的経緯とも比較しながら,有明海問題の全体像とその歴史的経緯を俯瞰する.近年,有明海に関する法制度や研究体制などが急展開したのは,"ノリ大不作の問題"に"諫早湾干拓の問題"が相乗作用を及ぼして社会問題化したことによるところが大きいが,問題の顕在化により有明海の研究が飛躍的に進捗したことは間違いない.「有明海及び八代海再生特別措置法」が制定された現在,有明海の環境特性と歴史的な経緯をふまえれば,有明海で強く求められているのは,研究上は有明海の環境特性を反映した有明海モデルの確立による「トータルシステムとしての有明海の把握」,行政上は流域管理を含め順応的管理手法も取り入れた「有明海物質循環系の包括的管理」,さらに地域市民レベルでは地域特性を生かした各地域ごとのローカルな「自然再生モデル」の実現である.長期的なビジョンに基づいて「宝の海」有明海の再構築を図るためには科学的知見と多様なグループの総意に基づくグランド・デザインの作成が急務である.
- 日本海洋学会の論文
- 2004-08-25
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