陸上施設からの海洋深層水放水による地先海域肥沃化の可能性検討(シンポジウム:駿河湾深層水の海洋学)
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概要
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我が国では近年,深度300〜700mの海洋深層水を陸上施設に汲み上げ,水産養殖等を行う施設が建設され,利用後に地先海域に放水している.この放水した海洋深層水による地先海域における藻類増殖の可能性について検討するために,類似の施設における状況を調査した.ナウル共和国における海洋温度差発電技術実証試験プラント(取水深度:580m,取水量:33,000m^3・day^<-1>)や,米国ハワイ州の自然エネルギー研究所の水産実験施設(取水深度:583m,取水量:6,000m^3・day^<-1>)では,放水した海水が周辺の海水と混合しにくい場所に藻類の増殖がみられた.一方,室戸の海洋深層水有効利用実験施設(取水深度:320mおよび344m,取水量:合計920m^3・day^<-1>)においては,現状では顕著な藻類増殖の促進はみられなかった.これは,放水した海水が周辺の海水と混合し易いためと推測される.以上のことから,海洋深層水の取水量が数千m^3・day^<-1>程度では,放水した海水が周辺の海水と混合しにくい場所には藻類は局所的に増殖するが,混合し易い場所には増殖しないことが推測される.さらに信頼できる結論を得るためには,今後は,長期間の観察と様々な海域での観察事例の蓄積が必要である.
- 日本海洋学会の論文
- 2002-08-21
著者
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