東京湾における夏季表層水中の有機態炭素・窒素・リンの分布
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概要
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1996年8月,東京湾において荒川河口から湾口にかけての定線観測と表面海水のサンプリングを行い,生物量,栄養塩濃度,粒子状及び溶存有機物濃度の分布と有機物を構成する炭素,窒素及びリン組成についての調査を行った.河口から湾中央部にかけて無機栄養塩濃度の減少と共に,クロロフィルa濃度,細菌数の増加が見られた.また粒子状有機態炭素と窒素濃度は全測点を通して,リンについては河口近辺の測点を除いてクロロフィルa濃度と良い相関を示し,湾内の粒子状有機物は生物由来粒子の寄与が大きいと考えられた.粒子状リンは河口付近で陸起源の無機態リン(粘上鉱物など)の影響を強く受けていたものと推測された.溶存有機態炭素は保存的挙動を示し,安定な陸起源成分か卓越していたと考えられる.窒素及びリンの形態分布から湾内の生物活動によって粒子状有機物と同時に溶存有機物も生産されていることが示唆された.有機物中の炭素,窒素,リンの組成比を見るとC/N比は比較的一定(粒子状:5.3〜6.3,溶存態:10.0〜12.6)であったのに対し,C/P比は湾内で著しく変動し(粒子状:57〜241,溶存態:184〜378),有機物中のリンが炭素及び窒素とは異なる挙動を取ることがわかった.C/P比のこのような顕著な変動の理由としては,有機物分解におけるリンの優先的な無機化,あるいは内湾域とは異なるC/P組成を持つ外洋性の有機物の寄与によるものであると推測された.
- 日本海洋学会の論文
- 2001-02-23
著者
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