内湾と外洋の相互作用 : 生物学からの視点「動物プランクトンを例として」(シンポジウム:内湾と外洋の相互作用)
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概要
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生物は進化の過程において,様々な環境条件に対し適応能力を獲得してきた.そのため,水域環境が大きく異なる内湾と外洋の間では生息する種の性質にも,生息する種にも明白な差が見られる.従って,両水域には性質の異なった種が集まって,それぞれの環境下に固有の群集を形成している.内湾と湾外で海水交流が起こった時には,内湾には本来生息しない「異地性種」が出現する.動物プランクトンは,一般に遊泳力が小さく水塊と共に動くので,その「存在」は基本的には物理的作用の結果を指標していると言うことが出来る.即ち湾外種(異地性種)の出現と海況との比較により海水交流の過程をタイプ分けすることが出来る.東京湾における10年間の観測に見られる湾外性中・大型動物プランクトン種の出現状況を解析した結果から,東京湾内外の海水交流には大きく分けて2つのタイプがあることが示唆された.即ち,(1)北方成分の風が成層期に吹く季節的な現象(春季と秋季)と,(2)黒潮系水が大島西水道から東水道へ流れる場合に起こる現象とである.内湾群集への湾外性動物プランクトン種の加入を用いて海水交流を知る手法は,湾外種の個体数密度等に依存しているため,必ずしも湾外種の出現の無い場合には海水交流が無いとはいえない.しかし,湾外種の出現は明瞭な水の交流の痕跡であり,湾外種は流入後すぐに環境変化によって死滅したりはしない.従って,湾外種の内湾での出現の有無や頻度を長期間モニターすることは,海水交流がどの様な時に起こるのかを知る上で有効である.
- 日本海洋学会の論文
- 1996-08-30
著者
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