発電所周辺域を利用した二枚貝増殖場造成に向けた生物的検討(海岸構造物における生物的検討-2,シンポジウム:海域エコテクノロジーの現状と将来課題)
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概要
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外海性のウバガイと,内湾性のアサリの両種は,底砂の細粒化とともに潜砂速度が増大し,反対に埋没後の這い上がり速度は底質の粗粒化とともに増大する傾向が明らかになった.平均殼長20mm,水温19.4〜25.0℃の条件下でのウバガイの潜砂速度は0.84(底砂の中央粒径Md_<50>:0.079mm)〜0.046mm・秒^<-1>(Md_<50>:0.78mm)であり,平均殼長32mm,水温19.1〜20.1℃の条件下のアサリの潜砂速度は,0.056(Md_<50>:0.079mm)〜0.025mm・秒^<-1>(Md_<50>:0.78mm)であった.一方,這い上がり速度は,ウバガイが21.3〜21.9℃で14.0(Md_<50>:0.079mm)〜26.1cm・日^<-1>(Md_<50>:0.78mm),アサリが19.6〜20.8℃で0.4(Md_<50>:0.079mm)〜3.5cm・日^<-1>(Md_<50>:1.02mm)であった.ウバガイでは設定した水温範囲で,潜砂速度と水温(15〜25℃)との間に明瞭な関係は認められなかったが,アサリ(平均殼長22.5〜27.3mm)では水温の低下とともに潜砂速度が低下し,Md_<50>0.079mmの場合24.7℃で0.092mm・秒^<-1>,15.1℃で0.055mm・秒^<-1>であった.両種とも這い上がり速度と水温との間に明瞭な関係は示されなかった.ウバガイについて48〜96時間の連続測定を行った結果,(1)砂中に潜砂した状態の酸素消費量は,ほぼゼロに近い値からある一定の値までリズミカルに変化する.(2)潜砂できない条件下での酸素消費量は平均的には,潜砂条件下よりも高い値を示す.(3)このことから,洗掘等により潜砂できない状態が続いた場合,成長や生残に悪影響を及ぼす可能性が示唆された.これらの生物側の必要条件は,工学的に底砂の変動を制御しようとする場合の一つの評価目標値と考えられる.
- 1996-02-29
著者
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磯野 良介
(財)海洋生物環境研究所中央研究所
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本多 正樹
(現)(財)電力中央研究所我孫子研究所
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木下 秀明
(財)海洋生物環境研究所中央研究所
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城戸 勝利
(財)海洋生物環境研究所実証試験場
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梅森 龍史
(現)日本海環境サービス(株)環境センター
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城戸 勝利
(財)海洋生物環境研究所
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木下 秀明
財団法人海洋生物環境研究所中央研究所
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