内湾における窒素,燐の挙動(シンポジウム:物質輸送とスキャベンジング)
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概要
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内湾における栄養物質のスキャベンジングについて,ボックスモデルで解析した内湾における窒素,燐の挙動に関する研究を総括した.渥美湾の湾奥では洪水時に集中的に流入する燐のかなりの部分が無機的に回転している.このことは河口域が燐の無機的堆積の場であることを強く示唆する.三河湾一色干潟は大型植物やマクロベントスによる生物蓄積とその漁獲さらに脱窒によって窒素,燐のシンクとなっている.このことは潮間帯やその周辺の極浅海域が有機的シンクであることをうかがわせる.湾域では物質の排出は主に密度流によって行われるが,これに光合成,沈降,分解の一連の過程が結び付くと栄養物質の閉鎖循環が形成され,排出が阻害される.従って,湾域の排出の程度は湾の物理的,生物化学的条件によって支配される.東京湾の年間の堆積/流入負荷比が渥美湾に比べて格段に小さいのは,東京湾は河川水量が大きく密度流が安定している,湾が南向きのため冬の季節風で2層流が強まる,地球自転により流出域と主な負荷域が一致する,湾口に左回りの残差流が存在するなどの物理的条件の他,燐が制限要因となって大量の窒素が栄養塩の形で流出する,小型動物プランクトンが優占して糞粒が沈降しにくい,湾奥の下層で周年脱窒があるなどの生物化学的条件によると考えられる.
- 日本海洋学会の論文
- 1990-08-31
著者
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